検証甲子園


2010年07月12日 佐藤薬品スタジアム  

橿原学院vs磯城野

2010年夏の大会 第92回奈良大会 1回戦



ボールに食らいつく矢野(磯城野)

磯城野の3年生が残したもの。

 このチームに‶何か″が生まれようとしているのが見て取れた。
格上を相手に回して2点を先制したからではない。二邪飛にも関わらず、走塁をやめず、一塁を全力で駆け抜けた1番・矢野。左翼から幾度となく、カバーリングに降りてきた左翼手・横井。彼らの姿に、そう思わずにはいられなかった。決して速くはない。だけれども、彼らの中に貫いていこうというものが見えたのだ。

「やっとそれらしい野球ができるようになってきた。隙を作らず、隙をつく。組織力で戦えるチームということです」。
そう語るのは、磯城野を率いて3回目の夏を迎える生島秀峰監督である。過去に、片桐(斑鳩と統合)や奈良商(現奈良朱雀)という普通の公立校を、県上位のチームにのし上げてきた実績のある指揮官は、敗れたとはいえ、この日見せたナインの姿に、少し手ごたえを感じている。

とはいえ、平成17年に北和女子高と田原本農が統合し、多くが女生徒で占める学校の指導は一筋縄ではいかなかった。何より、選手が集まらない。

なにせ、全校生徒270人のうち、男子生徒は70人程度しかいないのだ。その中から、野球部員を探し当てるとなると、ひと苦労いる。
「中学の一線級でバリバリやっていた選手と言うより、一軍半の選手が多い。中学時代は日の当らなかった選手たちに、『3年間で頑張って、試合に出れるようになろう』って誘ったメンバーで戦っているのが現状です」。

 

そんなチームに対し、生島監督が取り入れたのは、練習を厳しくするということではなかった。まずは、私生活面からの改善に力を入れたと、語る。「だらだらしたところがあったんで、まずは生活面から取り組みました。挨拶、服装、授業態度。人間力をなんとかつけたいと、そういうところからです」。

 

生島監督の指導は、その面においては一切の妥協はしなかった。現2年生は、割と経験者が多く力のある学年だが、生活面に問題がある選手には厳しく接したという。「野球が上手かったら、そんでええんかというのは作りたくなかった。力にある子が抜けるのは、戦力的には苦しいですよ。苦しいんですけどね、心を改めるまでは草むしりしかさせずに、干してきました」。

現3年生のメンバーは人間的によくできたチームになった。生島監督の指導を信じ、私生活面から律してきて、力をつけのだ。「練習試合で出られなくても、よく頑張ってくれた。今の野球部を作ったのは3年生たち。今日の試合は初戦で、試合時間も遅れた中やったけども、2点を先制していいスタート切れたのはやってきたことの成果が出た」と生島監督は言う。

試合は中盤にひっくり返され、結局はコールドで負けてしまったが、格上を相手にしての序盤の戦いぶりはこのチームが目指してきたことの成果であろう。
「2年3カ月でやったここまできた。ちょっとかかりすぎましたけどね。3年生は人間的にしっかりして、2年生が技術的にできていたチームだった。3年生が抜けるのは痛いけど、今、大泣きしているのは2年生なんで、この時間が大事ですよね。技術のあるこの子らが、精神的に鍛えられれば…」。

今大会で磯城野が示した‶何か″は、来年も残る12人のベンチ入りメンバーたちが‶形″に変えてくれるだろう。

(文=氏原 英明


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